紅茶に合う水とは What is the best water for brewing tea?
紅茶をおいしく淹れるのに最適な水とは、どのような水でしょうか?
水の硬度 ~ 紅茶に合う水は軟水か、硬水か?
紅茶に合う水は、紅茶本来の味わいや香りを十分に引き出すためには、基本的に軟水が良いとされています。
軟水とは、一般的に硬度が100以下の水のことです。
<水の硬度>
水の硬度とは、水の中に含まれるミネラル分の濃度を表し、カルシウム塩とマグネシウム塩の含有量の総和を炭酸カルシウム(CaCO3)の量に換算し、mg/L ( = 0.001 kg/m3) 単位の数値で示されます。
※「カルシウム量(mg/L)×2.5+マグネシウム量(mg/L)×4.1」で算出。
世界保健機関(WHO) の基準では、
●軟水 : 0 - 60未満
●中程度の軟水: 60 - 120未満
●硬水: 120 - 180未満
●非常な硬水: 180以上
と分類されていますが、日本の水は軟水が多く、ヨーロッパの水は硬水が多いようです。
厚生省(現・厚生労働省)の「おいしい水研究会」が、1985(昭和60)年に提言した指標から、日本の水道局では、おいしさの面で、硬度の目標値10~100mg/Lが設定されていることから、日本の水道水の硬度は地域により差はありますが、平均 50~60mg/L となっています。
東京の水の硬度は、平均60mg/L(40.5~90mg/L)
大阪の水の硬度は、平均45mg/L です。
お住まいの地域の詳しい水質や硬度をお知りになりたい場合は、お近くの水道局にお問い合わせいただくと教えてもらえるでしょう。
http://www.jwwa.or.jp/mizu/ent_up.html
ちなみに東京都は、以下水道局のHPをご参照ください。
http://www.waterworks.metro.tokyo.jp/suigen/keitou/
<世界の水の硬度>
次に、世界の水の硬度をみてみると、
○ロンドン(イングランド): 220mg/L
○エディンバラ(スコットランド): 35mg/L
○パリ(フランス): 280mg/L
○ミラノ(イタリア): 270mg/L
○ミュンヘン(ドイツ): 300mg/L
○ニューデリー(インド): 140mg/L
とヨーロッパには、硬水の地域が多いことが分かります。
(Source: http://sekken-life.com/life/sekainokoudo.htm)
<ミネラルウォーターの硬度>
では、市販されているミネラルウォーターの硬度は、どうでしょうか。
○ボルヴィック(フランス): 60mg/L(軟水)
○エビアン(フランス): 304mg/L(非常な硬水)
○ヴィッテル(フランス): 307mg/L(非常な硬水)
○コントレックス(フランス): 1551mg/L(非常な硬水)
となっており、ボルヴィック以外は、日本の水に比べて、非常に硬度が高い水です。
<水の硬度による味の違い>
水の硬度の違いにより、水の味は変わります。
軟水はミネラル分が少ないためクセがなくあっさりとした味で、逆に硬水はミネラル分が多いため、クセが強くコクがある味となります。
また、硬度の違いは、含有するカルシウム・マグネシウムなどの作用により、その水を使用する料理や飲料の風味に影響を与えます。
料理においては、硬水を使うと水分が食材に染み込みにくく旨味成分が出にくいため、洋風料理で肉の旨味を閉じこめるためには硬水が良いようです。
また、硬水で煮込むと肉の臭みがとれ、臭みの元である灰汁(アク)が良く出るため、カレーやビーフシチューなどの煮込み料理に合うようです。
パスタを硬水で茹でると程よく硬さを残し、パスタの旨味を閉じ込めるといわれています。
逆に、和風料理で、昆布だしなどグルタミン酸の旨味成分を引き出したり、ふっくらとしたご飯を炊くためには軟水が良いとされています。
<紅茶に合う水の硬度>
では、紅茶においては、水の硬度の違いはどのような影響を与えるのでしょうか。
紅茶に硬水を使用すると、水中のカルシウム・マグネシウムが、紅茶の水色や香味の要素の一つであるタンニンに反応するため、水色は黒ずみ、香りは弱く、渋みや味の深みも十分に抽出されません。
対照的に、紅茶に軟水を使用すると、紅茶本来の持つ色と香り、味わいが引き出され、水色は明るく、香りは強く、渋み・深みが十分に抽出された紅茶が出来上がります。
したがって、紅茶をおいしく淹れるには、基本的には軟水が良いといえます。
ただし、軟水でも硬度が低すぎると(30mg/L以下)、苦味成分が強く出すぎるため、紅茶に適した軟水は、硬度 30~50mg/L 程度が適当でしょう。
一方、紅茶の種類や、皆様の嗜好によっては、硬水を使用した方が良い場合もあります。
上述した通り、硬水のカルシウム・マグネシウムは、紅茶のタンニン(渋み成分)の抽出を抑えるため、渋い紅茶が苦手な方や、紅茶が渋すぎると感じた場合は、中程度の硬水(120 - 180未満)を使用すると、味わいがまろやかな紅茶を淹れることが出来ます。
例えば、ダージリンの繊細な風味を出すには軟水、力強いアッサム紅茶の渋みを抑えるには硬水といった具合に、茶葉に応じて使い分けても良いでしょう。
なお、紅茶の本場であるイギリスで市販されている紅茶を日本で飲んだら、味が濃すぎると感じられる方が多いと思いますが、それは、イギリスの紅茶はイギリス現地の硬水で抽出しておいしく出来るようブレンドされているためです。
以上の通り、使用する水の水質や硬度によって、紅茶の水色・香り・味わいは変化します。
淹れる紅茶の種類や、お好みによって、あなたの好きな紅茶に合う最適な水を探してみてはいかがでしょうか?